Keizo Murai
谷崎潤一郎 「蓼食う虫」は、 関西の伝統文化を愛でる風流人をスケッチした作品です。
お話の骨子は 恋人のもとへ足しげく通う妻を持つ夫。 離婚を決意した夫婦の心情が描かれています。
二番目の妻を、 知人に譲った谷崎潤一郎自身の体験が基になった作品です。
そう思って読むと、とても生々しい(;^_^A それ故に 主人公夫妻(谷崎夫妻)のエピソードは ちょっと鬱々としたものがあって読んでいて居心地が悪いのです。 ----- が、それに対して 妻の父親が出てくるエピソードは、 がぜん風流になります。
昭和初期の人形浄瑠璃の公演の描写がとても興味深いです。
劇場の近くにある「芝居茶屋」で、食事をし そこから仲居に案内されて劇場に行くなんて 今では考えられない風流な様子です。
人形浄瑠璃を観るにしても、桟敷で、 蒔絵のお重に入れてきた手作りのつまみを肴にお酒を飲むのです。 「おひとつどうどす?」 とお酌をするのは、お妾の「お久」
すばらしい・・・。
関西に移住した谷崎潤一郎が 伝統文化に魅せられていったことが、うかがい知れます。 ------------ 恋人のもとへ足しげく通う妻を持つ夫。 けなげだなぁと、思いきや。
彼は彼で、 見目麗しき馴染みの西洋婦人のいる娼館へ 通っていたなんて・・・(;^_^A
妻は、恋人を。 亭主は、娼婦を。 そして、義理のお父上は、お妾さんを。
なかなか複雑です(;^_^A
